古賀茂明「菅“新総理”のマスコミ・官僚支配」〈週刊朝日〉←自民党批判でメシが喰えている

菅義偉総理の誕生がほぼ確実になった。8月28日の安倍晋三総理の辞任会見からわずか1週間で、自民党内の主要派閥の支持を取り付けた。 【写真】菅氏の“側近”と言われる官邸官僚はこの人

 こんな雪崩現象が起きたのは、二階俊博自民党幹事長の影響力が大きいと言われるが、中でも、総裁選挙の党員投票をやめさせたのがカギだ。  通常の自民党総裁選では、国会議員票394票と同数の票が党員投票に割り当てられる。地方で人気の石破茂元幹事長や最近人気急上昇の河野太郎防衛相が有利になる。菅氏が出てもここで大差を付けられるのは確実だ。  そこで、二階幹事長らは、コロナ対応で政治空白を作れないとして、党員投票を行わず、各都道府県に各3票割り当てる方法を採用した。地方票は394票から141票まで減り、国会議員票を多く集められる候補が圧倒的に有利になった。  国会議員の投票と言っても、内実は主要派閥による談合だ。他派閥の支援を得られない石破氏は事実上敗戦が決まり、河野氏も世代交代を嫌う麻生太郎副総理・財務相に頭をおさえられ、出馬さえできないことになった。岸田文雄政務調査会長は立候補宣言したが、これは石破氏の票を減らすためだと囁く声もある。  二階幹事長の力が最も強くなるのは選挙の時だ。公認権や選挙資金を差配する。各議員は二階氏には絶対逆らえない。菅総理誕生直後に解散総選挙だという情報が流されたのも、菅氏支持の二階氏に皆がなびく流れを作るためだ。

結果、勝ち馬に乗る意識も働いて、菅氏支持が一気に広がった。  

しかし、腑に落ちないことがある。

まず、政治空白を作ることは許されないとして党員投票をやめたのに、一方で解散風を吹かせることができる理由だ。

解散総選挙の政治空白は党員投票より長く大きい。普通ならマスコミがその矛盾を突くはずだが、そんなことは起きなかった。党員投票を求める声があることは報じても、これを回避する二階氏らの判断を厳しく批判する論調は皆無。  さらに、安倍総理のスキャンダルのもみ消し役だった菅氏には、安倍氏同様批判が集中してもおかしくないが、そうした批判記事も見当たらない。