「People」誌の「最もセクシーな男」に2度選ばれたブラッド・ピットが、女性たちから大攻撃を受けるはめになっている。元妻アンジェリーナ・ジョリー「The Guardian」のインタビューで語ったことがきっかけだ。

 4日に配信されたこの記事の切り口は、彼女の人権活動家としての側面。自分が持つ権利について子供たちに易しく教える本を書いたり、若いアクティビストらと同じ目的のために話し合いを持ったりしていることについて触れられている。だが、子供の権利について語る中では、今も元夫ピットと親権について揉めている自身の事情も微妙に重なっていき、話はそちらにも及んでいく。裁判にからむことは話せないとしながらも、アメリカでは子供たちに法廷で証言させることが難しく、子供の声を聞いてもらえないのだと、彼女はインタビュアーに不満を漏らした(ジョリーは、裁判で6人いる子供たちのうちの3人に証言させようとしている。アメリカでは、それに対する批判の声も出ている)。

 ジョリーがピットに離婚を申請したのはちょうど5年前。だが、ジョリーは、「ある意味、10年くらい(前から辛かった)」と言い、離婚の決断は「軽い気持ちではしていない」とも語っている。さらに彼女は、それよりずっと前にも、ピットに蔑ろにされ、辛い思いをさせられたことがあると告白したのだ。

 21歳の時、ジョリーは、ハーベイ・ワインスタインが製作する「マイ・ハート、マイ・ラブ」に出演している。2017年に「New York Times」「The New Yorker」がセクハラ暴露記事を出したことがきっかけで、今や刑務所入りしているワインスタインだが、当時やりたい放題だった彼は、ジョリーにも手を出そうとしてきた。幸い、なんとか逃げ出すことができたのだが、とても恐ろしい経験だったことに変わりはない(記事の中でジョリーは『逃げ出せたなら未遂だったと言う人もいるかもしれない。でも、襲われそうになったということ自体が暴行なのよ』と述べている)。ジョリーはその出来事を当時の夫だったジョニー・リー・ミラーに語り、ミラーは多くの知り合いにその話を警告として伝えてくれた。以後、ジョリーはワインスタインとの接触を避けるようにし、「アビエイター」への出演オファーも断ったそうだ。

 しかし、ピットは、そのことを知っていながら、ワインスタインのザ・ワインスタイン・カンパニーが製作配給し、クエンティン・タランティーノが監督する「イングロリアス・バスターズ」に出演したのである。さらにピットは彼自身が製作と主演を兼任する「ジャッキー・コーガン」を配給してくれないかと、自らワインスタインにアプローチしたというのだ。愛する女性に何が起こったかを知っていながら、ピットはあえて加害者と仕事をすることを選んだということ。「そのことについて、私たちは言い争いをしたわ。もちろん私は傷ついた」と言うジョリーは、「ジャッキー・コーガン」のプレミアに出席することを拒否したとも述べている。

ピットだけでなくジョリーにも批判コメントが

 とりわけ「#MeToo」をフォローしている人々にとって、この話はショッキングなはずだ。「#MeToo」の初めにおいて、ピットはむしろ褒められる存在だったからである。「New York Times」の最初の暴露記事の中で、グウィネス・パルトロウは、ワインスタインにセクハラされたことを伝えると、当時恋人だったピットはワインスタインに「二度と彼女に触れるな」と強く言ってくれたと語っていた。おかげで、以後、ワインスタインがパルトロウに手を出すことはなかったという。そんな彼なのに、なぜかジョリーのお願いは聞いてあげなかったのだ。

 ツイッターには「ブラッド・ピットには我慢ならない。ナイスルッキングだからと言って人柄もナイスとはかぎらない」「彼はアンジェリーナ・ジョリーの言うことを無視した。この男、最低」「アンジェリーナ・ジョリーがワインスタインに何をされたかを知っていて、平気で彼と仕事をしたの?なんて心のない、勇気のない人なんだろう」「ブラッド・ピットは夫としても父親としてもダメだったのに、メディアは今も彼女が悪者で彼は被害者のように扱う。強くて成功している女性は嫌われるのね」「なぜ多くの女性に被害を与えた男を儲けさせる手助けをしたわけ?」などという、ピットへの批判コメントが飛び交っている。「アンジェリーナ・ジョリーがやった唯一の恥ずかしいことは、ブラッド・ピットと結婚したことだった」というものもあった。

 一方では、ジョリーに対する厳しいコメントもある。「アンジェリーナ・ジョリーブラッド・ピットが子供を虐待したと言い続けているが、証拠はない。『そのことについては語ることができない』と言いつつ、メディアに出たがる」「でたらめだらけ。ブラッド・ピットがやった一番良かったことは、あの狂った人と離婚したこと」「子供の権利とか言いながら、嘘を主張して父親(ブラッド・ピット)が子供に会えないようにしている。これこそ児童虐待だ」などというものだ。

 ジョリーとピットが結婚したのはピットが「イングロリアス・バスターズ」「ジャッキー・コーガン」を作った後だったことを指摘し、「どうして今さら持ち出すんだ?」と疑問を投げかける人もいる。別の人は、「『ジャッキー・コーガン』のプレミアに出なかったと言うけれども、『イングロリアス・バスターズ』のプレミアには来ていた。自分の目で見た」とツイート。「前みたいにゴシップの話題にならなくなって寂しいのかな」と、揶揄するコメントも見られた。

ピットの反撃はおそらくない

 こうやってまた大騒ぎになってしまったが、ピットが出てきて反撃することは、おそらくないだろう。ピットはこれまでもジョリーについて公の場でネガティブな発言はしてきていない。「The Guardian」がピットの弁護士らにコメントを求めても、彼らは拒否をしたという。

 悪者にされながらも弁解をせず、自分はたしかに酒を飲みすぎていたと認めて反省するピットのおかげで、このふたりの離婚騒動は、少なくとも表向きにはジョニー・デップアンバー・ハードのような泥沼にならないで済んでいると言える。だが、内側はこちらも相当にドロドロだ。ようやく問題が解決する時、焦点である子供たちは、いったいいくつになっているだろうか