* * * 11月14日朝(現地時間)、眞子さんは新しい人生の舞台、ニューヨークに到着した。圭さんは法律事務所に勤めながら、来年2月にニューヨーク州の司法試験を再受験する。眞子さんは「司法試験受験中の夫」を持つ一人の女性。なんの問題もない。 と思っているのは私だけではない。と言いたいので、1冊の本を紹介する。『皇室、小説、ふらふら鉄道のこと。』だ。 ■女の人を不幸にする 政治学者の原武史さんと作家の三浦しをんさんの共著で、深くて楽しい対談で構成されている。三浦さんが熱く語ったのは、「内親王の就職」だった。2人の結婚についてはこう言う。 「あの騒動で一番思うのは、なぜ男性の職業や稼ぎだけが問題になるのか、ということです。結婚相手がまだ稼げない状況にあるのならば、女性が稼げばいいのではと思うんですが、内親王の結婚は『専業主婦になること』を基本的な前提としているのかなと。(略)それって時代遅れじゃありませんか?」 18年8月、小室さんが米国留学に旅立ってすぐの発言だが、今でも全く違和感がない。三浦さんは結婚相手の経済力に頼る内親王の結婚システムを、「これでは女の人を不幸にしますよ」と言った。女性皇族も「女の人」という立場で語っているのだ。そして、こんな提案をする。 「例えば会社で自分の仕事はしつつ、祭祀のスケジュールに合わせて有給休暇を取得することもできるんじゃないですか?」 働くことは、人生への対応力。それが三浦さんの考え方だ。 ■そんなの気にしないで 眞子さんは博物館で勤務をしていた。だが、三浦さんの提案した姿とはだいぶ違った。だからこそ、これからの眞子さんに期待したくなる。三浦さんのこんな言葉があったからだ。
「内親王だって自分のやりたい仕事をしたらいいのに。好きな人と自由に結婚するためにも。実力で一般企業に入社しても、きっとコネとか言われちゃうんだろうけど、そんなの気にしなきゃいいのです」 眞子さんの渡米を伝えるNHKのニュースは、出発時も到着時もこう言っていた。 「関係者によりますと、小室さんと眞子さんは小室さんの知人らの協力も得て見つけたニューヨーク州の賃貸マンションで暮らし、夫婦共働きでの生活も考えているということです」 共働きという方向性を報じていたのは、NHKだけではない。眞子さんが「ミュージアムやギャラリーで勤務する」と予測するメディアは複数あった。「最有力候補はメトロポリタン美術館」という報道も「メトロポリタンでなく、アメリカ自然史博物館」という報道もあった。 どちらなのかどころか、就職するのかどうかも本当のところは知るすべもない。だけど、眞子さんがパンツをはいてニューヨークで働く。その姿はカッコいいだろうな、と思う。インターメディアテクでのパンツ姿がよく似合っていたからだ。 メトロポリタン美術館でも、アメリカ自然史博物館でも、他のどこかでも、眞子さんが就職すれば「特別扱い」と言われることだろう。 だから最後にもう一度、三浦さんに登場いただく。 「そんなの気にしなきゃいいのです」 (コラムニスト・矢部万紀子) ※AERA 2021年11月29日号より抜粋