連盟理事を務めていた頃の武藤容疑者(左)(東日本実業団空手道連盟HPより)
またもや東京国税局から逮捕者が出る有様では、国民からの信頼も地に堕ちたと言っていいだろう。しかも今回の下手人は持続化給付金の詐欺ではなく、妻をボコボコにしたというDV男。さぞや素行の悪い職員だろうと思いきや、周囲の評判は意外なもので……。 【写真2枚】DVで妻を骨折、内臓破裂させた武藤静城容疑者 ***
6月5日、警視庁小金井署は1月に妻を殴ってケガを負わせたとして、東京国税局に勤務する税務相談官・武藤静城(しずき)容疑者(59)を傷害の疑いで再逮捕した。 同じ容疑で5月に逮捕起訴されている武藤容疑者は、日常的に50代の妻へ暴行を繰り返していたとみられる。周囲には空手五段と吹聴しており、その腕力を女性にふるっていたとなれば余計にタチが悪い。 社会部記者によれば、 「今年1月、武藤容疑者は運転していた車の車内で、当時まだ交際期間中だった奥さんの顔面を左手で数十回も殴り、全治2カ月のけがを負わせた疑いがあります。それにもかかわらず、この夫妻は3月になって正式に籍を入れますが、その後の4月に武藤容疑者は妻のあばら骨を骨折させ、内臓破裂の重傷を負わせてもいるのです」
“空手の稽古中のケガ”と説明するよう要求
1回目の逮捕はこの4月の一件。武藤容疑者は妻に対して“空手の稽古中にケガをした”と病院に説明するよう脅していた。結局はそれを不審に思った医師が警察に通報。事件が発覚したのである。 現場となった東京・小金井市にある公務員住宅の近隣住民に聞くと、 「容疑者の部屋がある棟では、夜中になると女性の悲鳴のような叫び声が聞こえ、おかしいなとは思っていました。4月には救急車が駆けつける事態になってしまいましてね。亭主の逮捕後、奥さんは夜逃げ同然で家を出て行ったようですよ。わざわざ真夜中に引っ越し業者のトラックが来て、荷物を搬出していましたから」
私生活では美人の誉高い前妻との間に息子と娘をもうけたが、のちに離婚。子供にも熱心に空手を教えていたそうだ。 武藤容疑者を知る空手関係者はこう振り返る。 「選手としての実力は大したことないし、息子の昇段審査の際には虚偽の内容を書類に書いて、千代田区の空手道連盟から厳重注意を受けてもいましたよ」 掟破りも厭わぬ一方、こんな話も聞こえてくる。 「大山倍達のような名人でなくても、空手有段者の拳は凶器になり得るので、なぜこんなことに……」 と困惑するのは、元経産副大臣で東日本実業団空手道連盟の会長を務める保坂三蔵氏(83)だ。 「武藤さんは“武道界も近代化すべきだ”と改革を訴え、お金の流れをクリーンにして連盟を一般社団法人化するのに尽力し、理事として手間のかかる作業を処理するなど熱心に取り組んでくれました。8年ほど前に国税職員としてカンボジア赴任が決まり、連盟を離れましてね。帰国している頃だなとは思っていたのですが、音信不通だったんです」
カンボジアでは空手を通じて国王や大臣と面会
国税職員として北米と東南アジアで計3回の海外赴任を経験している武藤容疑者は、現地での体験談を「三都物語」と題して財務省の広報誌に寄稿。米コーネル大学行政大学院修了後、国税庁のニューヨーク事務所に勤務時代は、9・11のテロでWTC(ワールドトレードセンター)に2機目の旅客機が突っ込む場面にも遭遇し、命からがら脱出した経験を語っているのだ。 「やっぱり海外出張が多いからか、奥さんと離婚したそうだといううわさが流れたことはあります。カンボジアでは空手を通じて国王や大臣と面会を果たし、武道の普及にも全力で取り組んでいただけに残念です」(同) 警察の取り調べに対し、武藤容疑者は黙秘を貫いているという。 「週刊新潮」2022年6月23日号 掲載