「ほったらかし投資」で資産を築くためには、ある程度リスクを分散させるインデックス投資が確実性は高いように思われる。だが、個別株への「ほったらかし投資」で、誰もがうらやむテンバガー銘柄を続出させている個人投資家も存在する。ネットや各種メディアで話題の『テンバガーハンター』愛鷹さんだ。なぜ、そんなことが可能だったのか。みんかぶプレミアム特集「ほったらかし爆上げ投資」第5回では、“愛鷹流投資術” を披歴してもらう。
『テンバガーハンター』愛鷹が誕生するまで
2006年から投資信託を積み立て投資していました。が、投資信託は、資料を読んでも中身の分からない企業が名を連ね、値動きの理由もイマイチつかめず、資産運用している実感が湧いてきませんでした。そこでふと、大学在籍時に “学生億り人” だった後輩から言われた「先輩も社会人になったら株式投資すべきですよ」の一言を思い出し、2008年8月に貯金160万円を握りしめて本格的に日本の個別株投資を始めました。 最初は、キャピタル・ゲイン狙いの回転投資で「爆益するぜ!」と、日本株への投資をスタート! 個別株投資で優待や配当が権利日通過でもらえる以外の株知識は一切何もないままに(無謀)。意気揚々と始めるも、開始1カ月も経たずにリーマン・ショックが訪れ、買っては下がり、売っては上がる乱高下に振り回され、みるみる資産が溶けていき、真っ赤に染まる含み損を眺めるだけの日々が約1年間続きました。 そんな荒れ相場に振り回される日々に嫌気がさし、決算資料を読んで見つけた、配当のある好業績銘柄を拾っては握り続ける、インカム狙いの “ガチホ投資” の道へと2010年ごろから舵を大きく切りました。 個別株を始めて数年間は、うだつも株価も利益も上がらない低迷期が数年間続きました。が、毎日決算などの適時開示に目を通し、見つけた好業績かつ高還元が期待できそうな銘柄をコツコツと拾い、ひたすら種を蒔(ま)き続けました。その後、2011年に初のテンバガーを手にしてからは、アベノミクスの追い風が日本市場に吹いたこともあり、株価低迷時に蒔き続けたテンバガー株が次々と芽吹き、2013年からテンバガーが続出。 2017 年に13 社、2020年には19社のテンバガーに恵まれ、2022年には10年連続でテンバガーを達成し、投資家15年生でありながら、日本株のみで計67銘柄のテンバガー(以後、ATB67として表記=「愛鷹 10 bagger 67銘柄」の略)を経験。『テンバガーハンター』として、書籍・動画・雑誌など各種メディアで紹介され、今に至ります
個別銘柄の長期保有は、最もシンプルかつ難しい…なぜ可能だったのか
長期保有するには持続的な握力が要ります。では、その握力が何故続くのかを改めて考えてみました。『テンバガーハンター』というと、さもテンバガーを狙って手に入れているように聞こえるかもしれません。しかし実際は、宝探しをするトレジャーハンターのように、日本市場に眠るお宝銘柄を探し当てるハンターと捉えていただいた方が、“愛鷹流投資術” をイメージしやすいかもしれません。 過去に経験したATB67の購入当初は、そのほとんどが「株価10倍狙うぜ!」なんてことは毛頭なく株主になったものばかりでした。今の投資道へと方針転換してからは、株主優待という名の “自作お歳暮” を楽しみながら、配当金という名の “自作ボーナス” を定期的に口座に振り込んでくれる、世界に一つだけの “自作年金” を築くべく、マイペースで相場に臨んでいます。 なので、意識して長期保有するというよりは、インカムの恩恵を得るには自然と長期保有せざるを得ませんでした。そこへ、リーマン・ショックから世界経済を立ち直らせるべく、金融緩和の波が全世界的に押し寄せ、その波に意図せず “フルポジ乗り” していたこともあり、2015年には “億り人” へと至りました。 つまりキャピタル狙いではなく、インカム狙いだったからこそ握力が続いた。言わば、業績は見続けたけれども、株価は見なかった(意識しなかった)からこそ、テンバガーを手にすることができた、と言い換えられるかもしれません。 またインカム狙いの投資法と言うと、高利回り銘柄でポートフォリオを組めばよい、という考えに至るかもしれません。私の保有銘柄にはそういった銘柄も幾つかありますが、資産内ウェイトとしてはそれほど高くありません。では、どういった銘柄のウェイトが高いかと言うと、好業績に連動した増配や優待拡充などの株主還元率が高かった、つまり株主還元に積極的だった銘柄群でした。 そして、そういった銘柄群の中から多くのテンバガーが誕生しました。ATB67のデータで示しますと、有配率92.5%、株価10倍化までの増配率の平均値は3.9倍(中央値3.1倍)でした。ちなみに2022年までの増配率の平均値は、8.7倍(中央値5.6倍)です。 昨今、アクティビストによる株主提案も増え、ガバナンスの改善が求められるケースが増えていますが、株主還元(ペイアウト)の要求は最多です。日本では内部留保を貯め込む上場企業が非常に多いですから、上場企業自らが株主還元に積極的な姿勢を示し実行することで、機関・個人の投資意欲を触発し、株価上昇を伴う企業価値の向上を図ることは難しいことではないように思います