中国・恒大集団「経営危機騒動」の真相
グローバルショックに備えよ… photo/gettyimages
世の中的には新型コロナと自民党総裁選がニュースになっている状況ですが、実は投資家にとって一番気になるグローバルなニュースが、中国の巨大企業集団である「恒大集団」に経営破たん危機が訪れているという話題です。 【写真】日本人は知らない…いま中国で本当に起きている「ヤバすぎる現実」 恒大集団は広州の不動産企業から始まった一大コングロマリットです。中国政府が昨年8月に不動産価格の高騰を懸念して不動産融資への総量規制を設けたのがきっかけで、恒大集団をはじめとする中国不動産大手が徐々に資金繰りが回らなくなり、いよいよということになるのではないかと言われているのです。 日本では1990年代後半に破綻したダイエーの事例が似ているかもしれません。2兆円を超える負債をかかえ「大きすぎて潰せない」と金融機関が嘆く中、産業再生法を適用して国主導でソフトランディングのシナリオを模索した事例です。 ところが恒大集団の場合は負債が33兆円と一桁巨大なうえに、中国政府が支援をしないのではないかと見られている点が、デフォルトに陥った際の経済リスクをさらに大きくしています。
2021年9月20日に中国の株式市場が下落したことに始まり、欧州市場、米国市場と株価が急落し、敬老の日で20日がお休みだった東京市場も21日には660円もの日経平均株価の下落が起きました。そのきっかけが恒大集団の経営危機懸念の表面化だったわけです。 不動産の総量規制から恒大集団が破たんするとなると、日本で1990年に起きたバブル崩壊と類似した状況に中国経済全体が追い込まれる危険があります。そしてそこにはもうひとつ懸念があります。 恒大集団のような中国の不動産大手の負債はリーマンショックの際のサブプライムローン債と同様に、サプライチェーンのさまざまなところにリスク分散して存在しています。 このうちの一か所が破たんすると連鎖破たんが起きて、中国の金融システム全体に影響が起きるかもしれない。つまりリーマンショック型の金融危機にまで発展する可能性も危惧されるのです。 実際のところこの先どうなるでしょうかーー。 危機について声高に警告するメディアも多い中で、実は必ずしもバブル崩壊やリーマンショックの二の舞にならない可能性は少なくないと私は考えています。
習近平はどう動くか…?
習近平はどう動くか photo/gettyimages
理由は体制が違うという構造から、中国政府は日本政府やアメリカ政府よりも賢い政策をとり易いのです。それが一党独裁で権力が集中している政治制度のメリットです。 もちろん権力集中にはデメリットを指摘する意見が多いことは理解していますが、この局面で効いてくるのは権力集中の長所の方です。「まずい」と思ったら超法規的に方針変更できるのです。 もうひとつ加えれば中国は人材が豊富です。日本のバブル崩壊もアメリカで起きたリーマンショックも中国のエリート層はその構造について非常によく分析しています。同じ構造の危機であればそれを回避する方法も政策者は熟知しているのです。 つまり、最悪は起きない可能性があるということです。 さらに言えば今回の恒大集団の経営危機は、中国政府によってコントロールされた危機だと私は捉えています。中国の不動産市場全体で行き過ぎた投機加熱があってそれを是正しなければならない。その修正過程でかなり荒っぽいことが起きる。 それでも金融システム自体が壊れるようなことにはもっていかない形で是正を試みることができる。これはそのような話です。
「世界連鎖株安」と「チャイナショック不況」が襲う
株式市場では暴落が起きた photo/gettyimages
とはいえ、ここまでお話ししたような話が前提であれば恒大集団をきっかけにした金融ショックが近々世界全体を襲う可能性は想定しておいたほうがいいですね。 状況としては中国で何らかの金融ショックが起きる。そうすると中国はそれをコントロール可能だと考えていたとしても、中国に依存している日本経済、アメリカ経済、欧州経済がすべて影響を受ける。世界経済を連鎖株安とチャイナショック不況が襲う。 それがウィズコロナのタイミングで起きるわけですから影響としてはかなり大きなグローバルショックとなる。想定すべきはそのようなシナリオです。 この場合、中国はグローバルショックが起きてもそれをある程度容認するシナリオを選択する可能性は高いと思います。中国発のショックで西側諸国の経済が危機を迎えたとしても、中国経済の方がいち早く立ち直ればそれは中国にとって相対的に有利なシナリオだからです。 ここまで想定したうえで、仮に中国発のリーマンショック級の経済ショックが訪れた場合、われわれ日本人はどうしたらいいのでしょうか? 個人の立場で3つの対策を考えてみたいと思います。
われわれが資産防衛するための「3つの対策」
まず第一に、投資家としての対応を考えるとすると現金を一定量確保しておくことです。 リーマンショックのときを思い出すといいと思いますが、経済評論家の間で危機が叫ばれ始めてから実際に危機が起きるまで約1年かかりました。バブル崩壊も同様です。恒大集団の危機もこのあとしばらく嫌な気配のまま問題が長く続く可能性があると思います。 ですから「これは本当にデフォルトが起きそうだな」と思ったら、たとえ株価が上昇していてもどこかの段階で現金を確保しておくことです。実際、9月20日になぜグローバルで株価が下がったのかというと、世界中の投資家が一斉に利確に走ったせいなのです。 第二に仕事の立場で対応を考えると、この時期、転職や新しいチャレンジなどはいったん控えたほうがいいでしょう。これから悪いことが起きる可能性があるのであれば、様子見したほうがいいというわけです。 言い換えると悪いことが重ならないようにするという考え方です。「転職してみたら言われていたことと条件が違っていた」というような悪いことが、世界経済が最悪な状況になるという悪い時期に重ならないようにするということです。 そして第三にいまのうちに前倒しで仕事上の余力を確保しておくことです。ウィズコロナの時期に何を言っているんだとお思いかもしれませんが、やれることがないのであれば仕方ないですが、やれることがあるのであれば今のうちにいろいろな面での余力を増やしておくことです。
いまから備えよ
いまのうちにやれることはやっておく photo/iStock
たとえば事業運営上の判断として、そろそろ閉じたほうがいい店舗や先行きが不安な事業があれば早めに閉じたり売却に動く。 取引先との関係が良好であるならば長期の契約を早めに結ぶ。 銀行がお金を貸したがっているのであれば喜んで融資を受ける。 そういったことをいまのうちにやっておくべきなのです。 これはすべてのビジネスの基本だと私は思うのですが、ビジネスにおいて最大の危機は泣きっ面に蜂の状態に陥ることです。 仮にリーマンショックほどにはならないにせよ、それに近いことがこれからお隣の中国で起きる可能性があるのであれば、少なくともそれに備えるための準備はしておいたほうがいいと思いませんか?